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外国人が直面するワクチン・検査・生活困窮の課題
在日ベトナム人約1000人を対象とした「新型コロナの影響調査」
調査結果発表

2022年3月9日

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター
国際医療協力局

検査やワクチン接種のハードルの高さ 浮き彫りに

  • 検査を受けない理由のトップは「費用が心配」
  • 在留資格によってワクチン接種率に違いが
  • 深刻化する生活困窮:4人に1人が「家賃払えない」

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター(略称:NCGM)国際医療協力局は、日本国内に在住する外国人の方達が、必要な情報・支援・制度にアクセスするのをお手伝いすることを目的に、みんなのSDGs外国人タスクフォース、シェア=国際保健協力市民の会およびアジア経済研究所と共同で「みんなの外国人ネットワーク(Migrants Network & Action: MINNA)」を組織し、様々な活動を行っています。

このたび、みんなの外国人ネットワークは、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)による日本在住のベトナム人コミュニティへの影響について、数十万人のベトナム人がアクセスするFacebookページ「TAIHEN」を経由して調査を実施しました。929名の回答があり、分析の結果、情報発信と支援に関する課題が明らかになりました。

調査概要および結果は以下の通りです。

  • 調査名 :外国人が直面するワクチン・検査・生活困窮の課題
         在日ベトナム人約1000人を対象とした「新型コロナの影響調査」
  • 調査対象:在日ベトナム人 929人
  • 調査期間:2022年1月17日~1月30日
  • 調査方法:Facebook上の在日ベトナム人グループ「TAIHEN」を経由した匿名調査
  • 対象者属性詳細 :[性別]女性47%、男性53% [年齢] 20代 80%、30代 17%
             [在留資格]技能実習生 32.2%、留学生 29%、技人国 13%、特定技能 9%

検査を受けない理由のトップは「費用が心配」- 有症者の10人中約3人が検査にたどり着けず

27%の在日ベトナム人が、症状があっても新型コロナウイルスの検査を受けていないと答えました。理由として、「費用がかかってしまうのではないか」(58%)、「検査がどこでできるのか分からない」(45%)という2点が最も多く挙げられました。こうした人々の64%は「体の具合が悪くなったときにすぐに相談できる場所もしくは人がいない」と答えています。
これらの結果から、在日ベトナム人コミュニティが国や自治体等の適切な情報源へたどり着けておらず、相談できる環境にも乏しい状況が見えてきます。症状があるのに検査ができていないと、適切な隔離が行われないことから公衆衛生的に問題となります。

在留資格によってワクチン接種に違いが - 在留資格期限切れの人の場合、接種率はたったの21%

今回の調査回答者の新型コロナワクチン接種率は91%と高かったですが、在留資格によってワクチンの接種率に違いが見られました。留学生の93%、技能実習生の96%がワクチン接種をしていましたが、仮放免の人の場合は40%、在留資格が期限切れの人は21%でした。ワクチンを接種していない理由には、「副反応が怖い」(38%)、「接種したいが時間が取れない」(31%)、「自分が接種対象か分からない」(23%)、「在留資格のトラブルが不安」(19%)がありました。
接種券は住民基本台帳にのっている人にしか郵送されないため、在留資格によっては接種券が貰えていないという状況があります。接種券がない場合は、接種を受けたい人が自分で自治体に問い合わせをする必要がありますが、それは日本語を話せない外国人にとっては大きな壁となります。また、在留資格によって接種券発行のプロセスが異なることがあり、自治体側が十分対応できていない場合があります。

深刻化する生活困窮 - 4人に1人が「家賃払えない」

今回の調査で、52%の人が「住居に困っている」と回答しました。
さらに、その他の困りごとについても聞いたところ、「家賃が払えない」(回答者全体の24%)、「学費が払えない」(留学生の65%)、「食事に使えるお金が減っている」(全体の87%)と回答しました。このように、生活困窮に陥っている在日ベトナム人が多いことが分かりました。
体の具合が悪くなったとき、「すぐに相談できる相手がいない」と回答した人は46%でした。心身の健康課題を含め、様々な生活の困りごとを何でも相談できる環境整備の必要性が見えてきました。

調査から見える今後の課題

今回の調査から、日本にいるベトナム人の多くが、新型コロナの影響で困っている実態が明らかになりました。その原因として、新型コロナに関する必要な情報が届いていないこと、検査やワクチンにアクセスする上で様々な障壁があること、生活上の課題について相談できる環境が整っていないこと等が示唆されました。今後の水際対策緩和に伴い、外国人へ、きちんと情報を届け、支援体制を整備することが、これまでにもまして喫緊の課題となると思われます。ワクチンに関しては、外国人の接種率が日本人の接種率に比べて低いことが報道されています。WHOは「全ての移民・難民に在留資格に関わらず新型コロナワクチンへのアクセスを保障することが原則」としています※。新型コロナのパンデミックは公衆衛生的な危機です。外国人の接種率が低いことは感染拡大のリスクとなり、医療提供体制ひっ迫の一因ともなります。外国人を含めて誰一人とり残されないような形で新型コロナ対策をさらに進めていくことが求められます。

※World Health Organization.(‎2021)‎. COVID-19 immunization in refugees and migrants: principles and key considerations: interim guidance, 31 August 2021.
https://apps.who.int/iris/handle/10665/344793

みんなの外国人ネットワークについて

「みんなの外国人ネットワーク(Migrants Network & Action: MINNA)」とは、日本国内に在住する外国人の方達が、必要な情報・支援・制度にアクセスするのをお手伝いすることを目的とした集まりです。①「みんなのSDGs」 外国人との共生タスクフォース、②シェア=国際保健協力市民の会、③国立国際医療研究センター国際医療協力局、④アジア経済研究所、の4者が一緒に活動しています。
在日ベトナム人約1000人を対象とした「新型コロナの影響調査」

NCGM国際医療協力局について

NCGM国際医療協力局は、保健医療分野における日本を代表する国際保健医療協力機関です。
厚生労働省や外務省、独立行政法人 国際協力機構(JICA)、世界保健機関(WHO)などと連携しながら、低・中所得国の医療や保健衛生の向上を図るための支援を行っています。また、低・中所得国での経験を活かし、国内に在住する外国人支援や地方自治体への人材派遣、災害時の保健医療支援など様々な活動を行っています。

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