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2023-2024年、ザンビア共和国における大規模コレラアウトブレイク対応をふりかえる

第4回 混乱する司令塔と大量支援 -アウトブレイクの制御へ

2024年1月中旬から5月

2024年の幕開けと共に、ザンビアのコレラアウトブレイクは、国際ニュースでも報道され、世界に知られるところとなりました。年末年始の休暇が明け、ザンビアの民間企業、各国の大使館、国際機関からの物的な支援に加え、国際機関や組織からの医療チームを含む人的な支援が殺到し、急速に支援体制が整えられました。

一方、多くの物資が直接スタジアムに届けられ、物資が殺到したために、それを処理できず混沌とした状況に陥りました。

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多くの支援物質が届き、混沌とした状態になったスタジアムのコレラ治療センター

物資の受取、在庫管理、払い出すといったデータマネジメントに混乱が発生し、在庫量、消費量の把握ができず、物はあるものの患者や必要な人に届けることが困難な状態となりました。そこで我々は、管理スペース、在庫データを把握できるような払い出し記録の統一化を推進し、秩序を取り戻す支援を行いました。もともとプロジェクトにおいて塩田浩平専門家(カシオペアプロジェクトでの医薬品・医療機器の管理を担当)が各病院で行っている活動であったため、迅速かつ的確な支援を行うことができました。その後、スタジアムはコレラ関連物資の物流拠点となり、ルサカのみならず全ザンビアに物資を発送する拠点としても機能していくことになりました。

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塩田浩平専門家の努力によりコレラ関連物資が整理され、ザンビア全土の物流拠点として機能するようになった

混乱は物資だけではありません。世界各国や機関からコレラの専門家や医療人材も殺到したことで、援助協調に時間がかかり、多くの時間が現場ではなく会議の時間に費やされるようになりました。ザンビア保健省が中心となってオーナーシップを発揮したものの、医療支援のチームが現場に入り活動が開始できたのは3週間以上経過してからでした。その頃にはルサカにおけるアウトブレイクの状況はかなり落ち着き、スタジアムへの入院患者も100人を切るようになりました。

我々の活動もスタジアムからコミュニティへ移っていきます。コミュニティをコントロールすることがアウトブレイク終結に繋がるからです。スラム街に住む貧しい人々への医療アクセスを向上させること、つまり、正しい知識の提供、患者の早期覚知、早期治療介入、重症例の早期搬送がコミュニティでの致死率を減らすために重要です。しかし現実には、コミュニティへの介入には、ボランティアを活用し、正しい知識を提供し、適切な支援を行わなければなりません。これには息の長い支援が必要です。

1月14日より国際医療協力局から伊藤智朗医師、駒田謙一医師、佐野正浩医師が応援に来て、交代でコミュニティへの支援に入りました。またJICA調査派遣の枠組みで国際医療協力局から河内宣之医師、国際感染症センターから亀谷航平医師の他、国立感染症研究所からも神垣太郎医師をはじめ5名の専門がザンビアに入り、共に活動を行いました。これは2025年4月に設立される国立健康危機管理研究機構に向けた取組としても重要となりました。さらに、WHOのGOARN(Global Outbreak Alert and Response Network)の枠組みで日本赤十字社和歌山医療センターから小林謙一郎医師が支援に加わり、オールジャパンでの継続的なアウトブレイク支援を行うことができました。

4月に入るとルサカ郡における患者数は一日10名を切るようになり、アウトブレイク終結も近づいてきました。このアウトブレイクから得られた教訓を今後の対策に活かすため、保健省とWHOが中心となってレビュー会議が開催され、次回のアウトブレイクに備えたマニュアルの改訂作業への支援を行いました。

一連のアウトブレイク対応を通じ、パートナーはどのような支援を行うべきであるのか、多くの学びがありました。その中でも一番大きかったのは、答えは会議室ではなく現場にあるということです。現場に寄り添いながら、アウトブレイクのフェーズに合わせた現場のニーズの高い支援をタイムリーに行うことが、致死率低下に繋がることを身をもって知ることができました。700名以上のコレラで救えなかった命、そして、私たちを含め、その場に居合わせた皆の悔しさが、次回のアウトブレイク対応に生きることを願っています。

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    国立国際医療研究センターから派遣され、国際医療協力の佐野正浩医師が、コミュニティでの支援を行った

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    JICA調査団として派遣された国立国際医療研究センター 国際感染症センターの亀谷航平医師が、経口補水液を提供するポイントで使用する水の遊離塩素濃度測定の技術支援を行った

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