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2023-2024年、ザンビア共和国における大規模コレラアウトブレイク対応をふりかえる

第3回 スタジアムに1000人以上の患者を収容 ―激増する患者と現場の混沌

2024年1月上旬

2024年のザンビアは、1週間に2,500例、うち死亡が100例という感染のピークと共に年が明けました。急増する患者を収容するため、ザンビア政府はスタジアム(国立競技場)にコレラ治療センターを開設することを決定し、既存の設備を活用し、わずか3日で600床のベッドを用意し、その後1200床まで規模を拡大しました。スタジアムの選手用控室やメディアルーム、VIPルームなどをコレラ治療センターに転換させたのです。私たちは、感染管理の知識を生かし、患者の到着、評価、治療、入院、退院のフロー、患者ゾーンとスタッフゾーンの明確な区別を保健大臣に提案し、標識を作成し、受け入れ準備を進めました。

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ザンビア保健大臣にコレラ治療センターのゾーニングを提案し、その日の夜にはセンターが開所した

しかし、残念ながら、3日という期間は完璧な準備のためには全く足りない時間でした。ルサカにあるコレラ治療センターからは、救急車とは名ばかりのSUV車の後部座席に5−6人の患者が乗せられて、次々に搬送されてきます。点滴はされているものの患者はぐったりし、事態は切迫していました。ところが、多くの患者が殺到しているのに、受け入れ体制は十分ではなかったのです。ルサカ中から多くの医療従事者、サポートスタッフがかき集められましたが、どこに何名、どのようなシフトで配置するのかといったアレンジができず、研修も間に合いません。

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多くの医療従事者や支援スタッフがスタジアムに集められたものの、人員配置等のマネジメントが調整できず待機するスタッフたち

スタッフには休憩するための椅子さえなく、徐々に疲弊していきます。コレラベッドや点滴などの物品や薬剤がスタジアムに集められましたが、点滴台が無い、針捨てボックスが無いなど、深刻な物品不足にも直面し、現場は混沌としていきました。

このような混沌から秩序を取り戻すため、私たちは、朝から晩まで休みなしで活動を行いました。例えば、患者の記録を入れるためのクリアファイルを提供し、各患者さんのベッドに設置すると共に、治療プランを示したタグを作成し、どの患者がどんな重症度でどんな治療を受けているのかを明確化させました。

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患者さんを重症度に応じてタグを用いて区別し、カルテをファイルに入れてきちんと記録できるような体制を整備。床が消毒液で濡れているため、クリアファイルが有用であった。また地元の大工さんが一晩で作ったベッドと点滴台も活用された

患者フローの整理、廃棄物の保管先など、事態の状況に合わせた臨機応変な対応を行い、より安全に治療できる環境を整える支援を行いました。スタッフや物品の管理を行うためには、人事部などの事務部門が重要です。人事部、看護部、大臣室などを、感染管理の必要な患者エリアと全く別のエリアに設置し、ロジスティクスのサポートを行いました。

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スタッフ用入口を患者エリアに向かうレッドゾーン(右側)と事務エリアに向かうグリーンゾーン(左側)に明確に分け、ゾーニングを行った

ザンビア政府も底力を発揮します。地元の大工さんにコレラベッドや点滴台をわずか一晩で作らせ、ベッド不足の問題は速やかに解消しました。省庁の枠組みを超えて、多くの人々が努力し、患者さんの搬送システム、スタッフの2交代制勤務、食事の供給なども整い始めた頃、徐々に秩序が生まれるとともに、劇的に治療センターの運営が改善していきました。

(毎週月曜日に更新予定)

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