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2023-2024年、ザンビア共和国における大規模コレラアウトブレイク対応をふりかえる
第2回 患者の急増とザンビア政府を挙げた取組み
2023年12月中旬から下旬
本格的な雨期が始まり、恐れていたとおりにコレラ患者が急増してきました。各病院で準備したコレラ治療センターのベッドが埋まり満床となりはじめ、ようやくザンビア保健省内でのアウトブレイクへの危機感が高まりました。保健省次官がコレラ治療センターの現場に入り現状を把握した後に、ZAMBIA MULTISECTORAL CHOLERA ELIMINATION PLAN2019-2025※1に基づく全政府を挙げた対応が本格的に始まったのは、12月中旬になってからでした。副大統領、保健大臣、ルサカ州大臣などの政府幹部がコミュニティやコレラ治療センターなどの現場に入り、記者会見も連日行われ、それまで静観していた国際機関もアラートを発出するなど、アウトブレイクへの対応が急速に始まりました。
一方、コレラ治療センターでは、対応する医療従事者が不足し、ケアにあたる人材を確保することがなかなかできません。特に人手が不足する夜間の施設内での死亡が相次いで起こることが問題となりました。患者の急増に伴い、三次レベル病院に新たにコレラ治療センターを設置するとすぐにベッドは埋まってしまいますし、ベッドをさらに増やそうとしてもリネンすら十分に用意できません。医療従事者の配置やシフト組みにも苦労し、十分な治療を提供できずにいました。
コミュニティにおいては、安全な水を提供するため、ホットスポットのORP (Oral Rehydration Point)※2を含む地域への給水タンクの設置が開始され、コレラに遅滞する認識は急速に高まりました。しかし患者が急増したため、重症患者の発生を抑えるために欠かせないはずの積極的疫学調査※3が十分に行えず、積み残しが連日増え、現場に入る人材やコミュニティに行くための車両も不足していきました。
私たちは、できる限りの支援を郡、州保健局と共に行うとともに、現場における課題を保健省にフィードバックし、日本からの支援についての議論を急ぎました。JICAは迅速な支援を決定し、プロジェクトを通じて650枚の毛布を調達し、速やかに現場に届けることができました。
JICAとして迅速に調達し、現場に届けられた650枚の毛布。コレラ治療センターのリネンとして活用された
毛布は患者に用いる唯一のリネンであり、現場では完全に不足している物品の一つでした。さらに従前からプロジェクトに用いていた車両(プロジェクトカー)を提供し、濃厚接触者調査やコミュニティでの活動の支援を行いました。
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地域のボランティアが拡声器を使ってコレラに対する知識を広める活動。JICA等の使っていたプロジェクトカーが活用された
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郡保健局の職員とともに、プロジェクトが印刷した教育資料を使って地域の有力者にコレラ予防の大切さを説明
2023年末に向けて全ザンビア政府を挙げた取り組みが急速に本格化してきましたが、その効果が出るためには時間がかかります。コレラ患者の急速な増加は収まらず、コレラ治療のためのベッドは完全に埋まった状態の続いたままで、ベンチや床で点滴を受ける患者が出るなど、事態はますます切迫していったのです。
※1)ZAMBIA MULTISECTORAL CHOLERA ELIMINATION PLAN2019-2025は、コレラによる罹患率と死亡率を減少させ、2025年までにザンビアにおけるコレラ根絶を達成することを目的とした、政府関係省庁、保健パートナー、ドナーなど、複数の分野と関係者の緊密な協力をもとに作られた計画です。
※2)ORP (Oral Rehydration Point)とは、地域コミュニティにおける医療への入口で、早期診断、早期治療、早期搬送、コレラの情報提供の拠点となります。医療従事者の指導のもと地域のボランティアにより運営され、経口補水液を無料で提供してコレラによる死亡を防ぐ拠点になります。
※3)積極的疫学調査とは、コレラ患者さんと濃厚に接触した方に対し、行動歴や家族の状況を聞く取ることで、できるだけ早く患者をみつけ、予防策を講じることにより感染拡大を防ぐ目的に行います。コレラのホットスポットでは、患者の家を訪ねて調査を行いますが、住所が無く、電話が頼りとなっており、調査には大変時間がかかります。
(毎週月曜日に更新予定)